【有機化学】

マルコフニコフ則(Markovnikov’s Rule)とは何か?

アルケンとハロゲン化水素の反応メカニズム

投稿日 2021/02/09 更新日 2021/02/09


こんにちは。当サイトの管理者「元木皇天」です。

有機化学の反応則である、マルコフニコフ則(Markovnikov’s Rule)とはどのようなものかご存知でしょうか。

本記事では、例として「アルケンとハロゲン化水素」を用いて、マルコフニコフ則とはなんなのか、なぜ起こるのか、どのようなメカニズムで反応が進むのか、 反応機構を使って詳しく解説します。

参考文献:マクマリー有機化学(上)第9版

マルコフニコフ則(Markovnikov’s Rule)とは?

マルコフニコフ則とは「アルケンに付加反応を行う時、アルキル置換基が少ない方のC(炭素)にH(水素)が結合した化合物が生成される」反応則である。

2-メチルプロペンとHClの反応

有機化合物であるアルケンに対して付加反応を行うと、複数の生成物が混ざった混合物が生成されると予想される。

(仮に生成物AとBの2パターンが生成されると予想される場合、生成物AとBの混合物が生成され、その割合は1:1になるはず)

しかし実際に反応を行うと単一の生成物しか生成されない。

このような反応則をマルコフニコフ則と呼ぶ。

次の項では、なぜ複数の生成物ができると考えられるにもかかわらず、一つの化合物だけが生成されるのかについて解説します。

なぜマルコフニコフ則が起こるのか

なぜマルコフニコフ則で反応が起こるのか。

結論から言うと、より安定なカルボカチオン中間体を経由して反応が起こるからである。

カルボカチオンの安定性は、アルキル基の数が増えるほど高くなる。

なぜなら、アルキル基は正に帯電した炭素に電子を供与するからである。

カルボカチオンの安定性

供与する電子が多いほど安定性は増すため、多くのアルキル基が結合した、より安定な中間体を経由する反応をする。

反応例(2-メチルプロペンとHClの反応)

ここでは実際に2-メチルプロペンとHClの反応を例に、マルコフニコフ則の反応について解説します。

まず、2-メチルプロペンからHClに対して電子を供与してHが二重結合をしている箇所に結合します。

この時、HはCH2とC(CH3)2のいずれかに結合することができるため、2種類のカルボカチオン(以下画像の中間体A,B)が生成されると考えられます。

生成される反応中間体

さて、ここで前項で説明したカルボカチオンの安定性について思い出していただきたい。

上記の2つを見比べると、中間体Aは第3級カルボカチオン、中間体Bは第1級カルボカチオンとなっている。

安定性から第1級よりも第3級の方が安定するため、中間体Aが優先して生成される。

よって第3級カルボカチオン中間体を経由して反応が起こるため、以下の画像のように生成物Aのみが生成される。

生成される生成化合物

まとめ

マルコフニコフ則とは、アルケンへの付加反応において、1番安定なカルボカチオン中間体を経由して反応が起こる反応則である。

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